倉敷商工会議所会報 vol.760(2020/04/15)へ寄稿いたしました
任意売却の相談は、昨今の特徴としては2つの傾向が増えてきた
倉敷商工会議所会報を読んで下さっている皆さま、こんにちは!オハナ不動産の山部真一です。
4月は『任意売却の相談は、昨今の特徴としては2つの傾向が増えてきた』をお伝えします。
任意売却の相談内容の変遷ですが、10年前、私がこの業務を始めた頃は病気や離職による収入減という理由が大半でした。2008年、世界中を呑み込んだリーマンショックの発生で、日本企業の経営状態は著しく悪化し、サラリーマンの年収は大幅ダウンとなりました。ひどい場合は大胆なリストラや工場の閉鎖などによる失業、鬱などを発症して心身の健康を損なうなど、住宅ローンなどとても払えない状態に陥りました。そんな時代と比べると、現在私のもとに任意売却の相談に来られる方のタイプは少し変わってきたように思います。
まず一つめのタイプは、離婚が原因で持ち家を売却したいという方です。夫婦名義で購入した一軒家やマンションですが、2人でローンを支払っていたものを1人で払うとなると当然負担が大きくなります。そのため、家屋売却でローン自体を清算したい方が多いのです。昔は家の購入は人生の一大事で、毎月コツコツ貯金を積み立てていくなどの覚悟と努力が必要な非常に高いハードルが高い行為でした。しかし最近は住宅ローンの審査が緩くなり、以前ほど家の購入が厳粛な行為と思わず、結婚より先に家を購入するカップルや「イヤになったら売ったらいい」という感覚で簡単に購入してしまう人もいます。安易な気持ちで家を買う夫婦の増加により、離婚による任意売却の案件も増えているのでしょう。私は、離婚で感情的になっている元夫と元妻、そして金融機関という三者の間に入り、それぞれの言い分を聞いて現在できることを提示し、各人の判断を互いに伝え、最終的にどこに落とし込むか決めていきます。この場合、全体の交通整理が私の仕事になります。
もう一つのタイプは、子どもの教育費のためという方です。これはあきらかに10年前にはなかったケースです。相談者は、夜勤手当や残業代などがカットされて全体の収入が減った中でも、子どもの高校・大学の授業料や通塾費用などは削れないと言います。彼らは「子どもに迷惑はかけられない」と思うがゆえに教育費をカットできず、そのしわ寄せで住宅ローンが払えなくなっているのです。このようなタイプの方々は、我慢に我慢を重ね、相談に来られるのもギリギリになりやすい傾向があります。ギリギリの状態で持ち込まれると、「もっと早く相談に来てくれれば対策法があったのに」ということになりかねません。
任意売却は背後にどんな理由があるにせよ、相談が早ければ早いほど対策を立てやすい側面があります。よりよい未来を作っていくには、早めにギブアップという選択を受け入れ、どうやってこの事態を切り抜けていくかという部分に頭を切り替えた方がいいのかもしれません。